暮らしとつながる料理教室 viorto! style_19
タルト不動産を利用してくださったお客さまに、その後の様子を取材させていただく企画。
19回目は、暮らしとつながる料理教室viorto!の今枝ゆかりさんです。
-移転を考えられたきっかけを教えてください。
「2015年の4月から本町にあるビルの5階で料理教室をしていました。
もともと住居として賃貸されていたお部屋だったので、
教室をするにはあまり動線が良くありませんでした。
ただ退去時の原状回復を考えると、
自分が思ったように室内を改装することはできません。
またレッスンで使っている調味料や食材を販売はしていたのですが、
レッスンに参加していない方が、
買い物だけに来るには、アクセスしづらいようでした。
そこで、スタジオとして改装ができて、
店舗的に商品の販売もできるような
1階もしくは2階の物件を探し始めました。」
今枝さんから最初に相談があったのは、
2017年の8月でした。
イメージしている新しいキッチンスタジオのお話を詳しくうかがいました。
ただご希望されている市内中心エリアで、
1階もしくは2階となると、
競争率も高く、なかなか条件にあう物件はでてきません。
他の不動産屋さんにも声をかけていて、
いくつか検討もされたそうですが決定には至りませんでした。
それから約2年が経った2019年10月、
一本の電話がありました。
丸の内に所有している不動産を貸したいので、
相談に乗ってもらいたいという内容でした。
現地に行ってみると、
Rai-Atelierさんまで徒歩1分、
岡山城や図書館にもほど近く、
メインの通りからは一本中に入っていて落ち着いたロケーション。
建坪は約11坪の小さな建物の1階でした。
パッと見た感じはワンルームの住居ですが、お風呂はありません。
3年ほど前に、セカンドハウスとして借りていた方がいたのですが、
その後は空家だったそうです。
オーナーさんからは、
このまま借りてもらってもいいし、
入る方が好きに改装してもいい、
店舗や事務所でも大丈夫ですと
ありがたい条件のお話をいただきました。
私は物件を見ているときから、
今枝さんのことが思い浮かんでいました。
店舗としては目立ちにくい場所で、
広さも少しコンパクトだけど、
料理教室としてはちょうどいいかも…。
賃貸条件を整理して、
情報を今枝さんに送りました。
-物件情報を見たときはどんな印象でしたか?
「以前からLA NOTE MUETTEさんでお花を買っていて、
そのすぐそばの物件だったので驚きました。」
-内見してみた印象はどうでしたか?
「場所は駅も近くて、その割に静かな場所ですごく良かったです。
ただ玄関を入るとスロープや大きな棚もあって、
なかなかイメージが湧きませんでした。
本町のスタジオより狭くなるので、
単純に荷物が入るかどうか心配でした。」
-いつこの場所に決めようと思えましたか?
「英美さん(LA NOTE MUETTE)が、
ここは良いと思うと言ってくれたのは心強かったです。
前向きに考えていこうと思いました。
タルトさんにはいくつかプランを提案してもらいました。
キッチンスペース、収納スペース、レッスンスペースなど、
色々なバランスを調整していって、
本町のスタジオで使っていたテーブルが
まっすぐおさまったときに、いけるかもと思いました。」
今枝さんの気持ちが固まったところで、
オーナーさんにご報告をし、
12月には賃貸契約をしました。
並行して、図面や見積もり作成、
仕様、設備、素材を今枝さんと決めていきました。
-移転するにあたって、改善したかったことはどんなところですか?
「カウンター(料理の過程を見てもらう場所)とキッチンが離れていたので、
近くに配置して、レッスン時の効率を良くしたい。」
「せっかく気に入っている食器も棚の中にしまっていたので、
使わない食器も含めて生徒さんに見てもらえるよう、
食器棚をつくりたい。」
「もう一つは、食材や調味料を販売できるよう、
商品棚を作りたいと思っていました。」
-そもそも料理に興味を持ったきっかけを教えてください。
「私が小学生から中学生くらいまで、
母が自宅で洋菓子の教室をやっていました。
家に帰ると、出来上がったケーキをみんなで食べていたり、
母がケーキのレシピを考えていたり、
そういう環境が当たり前にありました。
だから料理をするなら、料理家になりたいと自然に思っていました。」
「小学生のときには、
日曜日に簡単な朝ご飯をつくっていました。
父と母からおいしかった、
ありがとうと言ってもらえるのが嬉しかったんです。
中学生になると、
母が手をかけた料理をつくってくれていたこともあって、
私もレシピをみながらミートソースやコーンスープをつくるようになりました。
どんどん興味が湧いてきて、
母に聞いたり、本を買ったりしながら、
料理にのめり込んでいきました。
高校生のときには、
将来は航空会社に勤めて、世界をまわっておいしいものを食べたい、
そしていつかは料理教室をしたいと思っていました。」
-本当に航空会社に就職したんですよね。
「そうなんです。海外勤務も経験しました。
色々な場所に行っておいしいものを食べました。
中でもイタリアで食べたミートソースが本当においしくて!
使っている食材はシンプルなんです。
でも調理の仕方、考え方が違っていました。
日本料理は、醤油、みりん、みそなど、調味料で味をのせていくことが多いのですが、
イタリア料理は、塩やお酢が中心なので、
素材から味を引きだしている、
特に油の使い方が違うと分かりました。
そこから、さらに料理にのめり込んでいきました。」
-料理教室を始めるまでの経緯を教えてください。
「結婚して、子どもができたタイミングで航空会社を退職しました。
私は誰かのために料理をつくることが本当に楽しいので、
家族だけでなく、友達にも料理をつくっていました。
最初は遊びだったのですが、その延長で、
少しずつ料理教室として、生徒さんを募集するようになりました。」
「ただ、その頃に東日本大震災が発生し、原発事故も起きました。
関東に住んでいたのですが、
食べ物に不安があるという状況が、すごく苦しかったんです。
ちょうど飲食関係の人たちが岡山に移住しているという話を聞いたので、
試しに岡山に行ってみたら、心の開放感がすごくて。
家族と話し合って、2012年に岡山に移住を決めました。
移住者のコミュニティの中には、
ぜろどーなつの加藤奈津子さんがいました。
奈津子さんが、関東で料理教室をやっていたなら、
岡山でもやって欲しいと声をかけてくれたんです。
それで、自宅で料理教室を始めました。
最初は移住者の方が多かったのですが、
少しずつ岡山の方も増えてきて。
自宅で続けるには限界になったため、
本町のスタジオを借りることにしました。」
「私は食いしん坊だから、おいしいものを食べたいんです。
そのためには地域経済や政治のこと、環境のことまで気になります。
結局、それは自分の暮らしにつながっていると思います。」
「どうやったら野菜がおいしくなるか、基本を伝えたい。
自分でアレンジして、
料理を創造できるようになると楽しいと思います。」
2020年3月にスタートした改装工事。
ちょうどその頃、新型コロナウィルスの感染が
少しずつ全国に広がりはじめていました。
資材の遅れはあったものの、予定通り工事は竣工することができました。
-工事からお引越しまではいかがでしたか?
「コロナウィルスと改装工事が同時進行だったので、
これからどうしていけばいいのか、本当に不安でした。
当初はゴールデンウイークが明けたら
新しいスタジオでレッスンを再開する予定だったのですが、
大事をとって、5月はお休みにしました。
その1ヵ月は、新しいスタジオで料理をすることに慣れたり、
レッスン再開以降の準備に時間をかけることにしました。」
-レッスンを再開してみていかがですか?
「感染対策をしながら、以前より人数を減らして開催しています。
キッチンと食卓を分けてつくったことも良かったです。」
-新しく始めたことはありますか?
「オンラインレッスンを始めました。
ライブ配信ではなく、
マガジン形式(購読型)のレッスンなので、
繰り返し動画を見ることが出来ます。
お家で食べるごはんの中に、
楽しさを見いだしてもらえるようサポートできたらと思っています。
中にはレッスンに来たことが無いけれど、
オンラインレッスンを買ってくださる方もいて、本当に嬉しいです。」
「会員制のオンラインサロンも始めました。
レシピや料理動画だけでなく、
おすすめの食材やレストランを紹介したり、
生産者さんの声を届けたりしています。
オンラインレッスンとあわせて楽しんでもらえたらと思います。」
「ずっとやりたいと思っていたオープンキッチンも少しずつ初めています。
当日は、どなたでも商品を購入していただけます。
建物のオーナーさんも来てくださって嬉しかったです。
今後もオープンキッチンは計画していきたいと思っています。
人と出会えることは、やっぱり大切なので。」
●暮らしとつながる料理教室viorto!
住所 : 〒700-0823 岡山県岡山市北区丸の内2丁目10-2
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竣工写真: Kato Shinpei Photo
工事前、工事中写真: taart design
今枝さん取材ご協力、本当にありがとうございます。
三宅
●お客さんのインタビュー記事(*まとめて読めます)
https://taart-design.com/column/lifestyle/