小さな本屋さんのウエ #201 ④
●登場人物
福井さん:1階にMILBOOKSが入居するプリペアドビルのオーナーさん
佐藤さん:デザイナーの佐藤豪人さん(HIDETO SATO DESIGN)
…つづき
佐藤さんから、MILBOOKSの上、プリペアドビルの201号室でトライしてみたいと連絡をもらい、僕は嬉しさと同じくらい不安もありました。
オーナーさんと入居者さんと不動産屋で、賃貸の部屋をつくると言っても、この時点では進め方もリフォーム内容も、まだちゃんと考えていませんでした。
急いで企画書をまとめ、福井さん(オーナー)のところへ提案しにいきました。
初めてのことで、正直やってみないと分からないこともあります。
僕なりに、想定できるリスクをピックアップし説明しました。
主に4点。
①入居者さんには、リフォームはフルオーダーでは無いこと、予算があることを説明しておく。
(主導はオーナーさんにしておかないと、やりたいことが膨らんでまとまらなくなってしまうかもしれない。)
②もし契約後、入居の前(工事中)にキャンセルになったら、違約金として家賃の1ヵ月分いただく。
(オーナーさん、入居者さんともに。)
③入居日は遅れる可能性があることを契約書に入れる。
(仕様が決まらなかったり、工事が遅れる可能性がある。遅れる場合、その理由によって負担の仕方を決める。)
④入居後のDIYはOKだけれど、原状回復できない内容を行うときは、オーナーさんの確認必要。
(価値を高めるようなDIYは大歓迎。でも内容は把握しておく。)
あと、リフォームについて。
福井さんがやりたいことをヒアリングしながら、僕がやりたいこととすり合わせ。
予算はあくまでも原状回復するくらいなので、大規模な工事はしません。
設備はそのまま。
間取りは2DKですが、引き戸を外せばワンルームになるので、使い方は入居者さんに任せることに。
お互いに共通していたのは床を変えたいということ。
現状の床は複合フローリングと畳です。
既存床を剥がして、下地を作って無垢の床を貼っても良いけれど、コストと手間を考えるともうちょっと気軽にやりたい。
そこでみんなの材木屋(岡山県の西粟倉)のユカハリ・タイルを敷くことを提案しました。
ユカハリ・タイルは、サイズ50cm×50cm、表面は杉やひのきなどの無垢でできていて、裏面はゴムシートでできています。
既存の床の上に置くだけで、部屋の印象が変わります。
あと壁や建具は塗装で、全体をシンプルにまとめていくことにしました。
続いて、佐藤さんと打ち合わせ。
通常、賃貸の場合、入居する人は、すでに出来上がった部屋に自分のライフスタイルを合わせます。
しかし今回は、入居者さんにある程度の自由が与えられます。
オーナーの福井さんと話したリフォーム内容を佐藤さんに伝え、この部屋をどう使いたいかヒアリング。
佐藤さんは、今まではノマドワークでした。
初めて事務所を借りることになり、お客さんをどのように迎えるのか、作業スペースや収納はどれくらい必要なのかを考えなければいけません。
色んなケースを想定しながら、この日は打ち合せし、持ち帰って考えてもらうことにしました。
数日後、2回目の打ち合せで、概要は決まりました。
最初、僕は和室を残して、DKと洋室にユカハリ・タイルを敷こうかなと思っていましたが、佐藤さんとしては和室を洋室(ユカハリ・タイル)に変えて、収納や作業スペースにした方が都合がいいとのこと。
DKは何もさわらずそのままにして、奥の個室2つを変えた方が、違いが分かって良いのではと提案をもらいました。
確かにキッチンなどの設備はそのままなので、DKは床をさわらない方が、メリハリがきいて、僕も良いと思いました。
早速、福井さんに佐藤さんの希望と、リフォームに掛かる費用を提案し、もちろんOK。
これで概要が決まりました。
打ち合せ回数は福井さん、佐藤さんそれぞれ2回、期間で言うと約1ヵ月。
早いか遅いかは、これから何回かやらないと何とも言えませんが、初めてにしてはスムーズに進んだ方だと思います。
きっと、何でもポジティブに考えて下さった福井さんと佐藤さんのお陰です。
また打ち合せの中で、佐藤さんから「白」というキーワードが出てきました。
ここは、佐藤さんがデザインをする場所になります。
またクライアント、関係者など、新たな出会いの場所でもあります。
何かが始まったり、生まれる場所として「白」い空間にしたいとのことでした。
入居に向けて、工事が始まります。
●小さな本屋さんのウエ(過去記事も通して読めます。)
みやけ